社長からのメッセージ
「名阪の企業成長のカギは、社員全員が握っている」
絆を感じた出会いについて教えていただけますか。
「絆と言えるのかどうかわかりませんが、初めて自分をさらけ出して話をすることができた人物と、20年ほど前に出会いました。当時、社長になる前の私は、非常に悩んでいました。自身を省みる姿勢が全くなく、相手に対して『どうしてできないんだ』、『できないやつがダメだ』という一方的な考え方をしていました。社長としての器ができていなかったんですね。当然うまく行かないことが多くて悩んでいました。そのときその方に『おまえの存在がすべてを不幸にしている』と言われましてね。普通だったら腹が立ちそうな言葉ですが、その方は私と同じように社長という立場で経験を積んでこられた方でしたから、その言葉はすんなりと私のなかに入ってきました。他の誰かの言葉だったら受け入れられなかったかもしれないと思います」
非常に良いタイミングで絆が生まれたわけですね。
「そうです。それまでの私は、我儘で独りよがりで、人を成長させる努力も意識さえもありませんでしたから、この出会いでの気づきがなかったら、人を育てることも会社を成長させることもなく、名阪急配を今のようにすることはできなかったと思います」
その後、人に対する考え方はどのように変わられたのでしょう。
「それからは『人を育てよう、俺が育ててやる』という気持ちに変わり、新卒採用を開始し社内研修制度を作るなど、人材育成カリキュラムの策定を急ピッチで進めました。これについては現在進行形で、今いる社員とこれから入社してくる人たち全員に、絡むチャンスを設けています。もっともっと良いものへと、自分たちで変化させていって欲しいと考えているからです。というのも、人が育つためには知識よりも意識が必要だからです。心のしつけが一番ですから、弊社では入社後すぐに一斉で教えるのは、礼儀などの本当に必要最低限の部分だけです。そのあとは、自身に何か必要かを自分の頭で考えさせ、提案させます」
そのような心のしつけを大切にする村井社長の思いは、名阪急配のアロハスピリットに集約されて
いますね。アロハスピリットはどのようにしてできたのですか。
「クレーム対応で同じお客様のところへ陳謝に通い続けたことがあるのですが、ひと月近くになるとさすがに疲労困憊してきまして・・・。その日も謝りに伺うためにお客様の会社のそばにある喫茶店で、暗い気持ちで時間調整をしていたのですが、そのときふと手にした雑誌に載っていたのが『アロハ』の語源についてです。読んでみると、目の前がパッと明るくなって急に元気が出てきました。現場で働く社員も行く先々で辛い経験をしているでしょう。そのときにアロハの気持ちを理解していれば、頑張る元気が湧いてくると思い、これは皆にも伝えたいなと。それがアロハスピリットをつくったきっかけです」
最後に、未来の社員へ向けて、絆というキーワードでメッセージをお願いします。
「仕事をする目的は人それぞれですが、お金を稼ぐだけが目的だというのでは淋しすぎます。『この人と仕事がしたい』とか『○○さんがいる会社だからいい』と言える仕事のやり方をして欲しいものです。そこには必ず絆があります。絆はたったひとりでは結べません。ひとりの力や思いでは、出来ることは限られますが、ひとりの思いが誰かの共感を生み、絆ができ、それがたくさん集まれば、より大きなことが出来ます。名阪急配も、最初は会長と専務のたったふたりだけの絆から始まりました。それが紡ぎ続けられてきた上に、今存在しています。全員が絆を感じて仕事が出来るならこんなに素晴らしいことはないでしょう。みなさんにもそれを感じて欲しいと思います」